出発前日まで、迷っていた。アメリカから、一通の手紙が届くまでは・・・。
一年前から音信不通になっていた、昔の恋人からのクリスマスカードだった。これまでの想いが、細かい字で綴られていた。心の中の思い出をたぐり寄せようとした。霞んで見えない。封筒の住所の部分を破りとり、闥に挟んだ。翌朝、トランクに荷物を詰め込んだ後、チケットを手にアパートを飛び出した。
成田空港到着が、フライト出発時刻の1條ヤ半前。チェックイン・カウンターから、走るはめになってしまった。軽い疲労感。それは飛び込みで入ったバンコクのホテルで荷物をほどくまで続いた。ホテル付属の封筒と便せんを掴むと、向いのマクドナルドに入った。
閹が書き終わると、注文していたポークバーガーを頬張った。塩っぱかった。コーヒーも冷めていた。しばらく車が走って行くのを眺めていた。
どれくらいたっただろうか。切手を封筒に貼ると、店を出た。通りすがりにポストを見つけ、閹を投函した。騒音と排気ガスで、吐き気がした。
後日、念のためインターネットカフェから、メールを出した。
You just read my letter
from Bangkok. It's my answer.
「海を見たいな・・・」
ビーチ・リゾートへ行くことにした。
何かから逃げ出すための口実だったのかもしれない。
・・・・
新大阪駅から実家に電話を入れると、「行方不明」ということになっていた。
てっちりとふぐ肝、八海Rの吟穣を堪能し、「マスタ−キ−トン」を読破して、カラオケに明け暮れ、大阪を後にした。
東京のアパートでは、何の変哲もない日常が待ち構えていた。
〜〜 The END 〜〜
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